血糖値の安定(*1) やホルモンの分泌(*2) などを期待して3カ月ほど前から頻度と強度を上げた筋トレが、最近、趣味化しつつあります。
筋トレによって筋肉をつけることで、血糖値の安定という1型糖尿病患者にとっては大変ありがたい効果が期待できる。それだけで筋トレをやる意味はあると思うのですが、さらに筋トレには、基礎代謝や免疫力の向上(*3) 、循環器系疾病や認知症の予防(*4) 、長寿遺伝子への刺激(*2) なども期待できるようです。また、正常な姿勢の維持や、肩コツ・腰痛の予防・軽減などにも、もちろん効果があるでしょう。
・・・凄いぞ、筋トレ。
また、筋トレ後はインスリンの効きが半日程度、非常に良くなります。
健常な方にとっては、食後の高血糖や、血糖値の急激な上昇を抑える効果や、(インスリンの必要量が減ることによる)膵臓への負担の軽減などが期待できますが、1型糖尿病の方は、インスリンの注射量を、安静時よりも少なくする必要があります。
(17/05/27:追記あり(筋トレ時の血糖値変動の記録<リブレプロ>)
さて、諸々の効果を期待して、頻度と強度を上げて筋トレをしているのですが、悩ましいのが、筋トレをする前の血糖値と、血中のインスリン残量の調整です。
というのも、1型糖尿病になって数年経った現在、(血中インスリン残量が少ない=食後しばらく経った後や、運動前に調整を行わない場合、)「有酸素運動をしても、無酸素運動をしても、血糖値が下がらないどころか、むしろ上がる場合さえある」という事態がよく起こるのです。
「運動によって血糖が消費される以上に、交感神経優位になることによって血糖量が上昇しているだけ」ならまだいいのですが、「血液中のインスリン量が足りず、血糖が消費できない(糖利用が障害される)ために、(脂肪と)筋肉が分解されている」ケースも考えられ、その場合、いくら筋トレをしても、筋肉が大きくならない(なりにくい)ため、血糖値の安定や基礎代謝の向上は期待できなくなってしまいます。
実際、筋トレの頻度と強度を上げる前の数カ月は、(低めの頻度と強度でしたが)筋トレをしているにも関わらず、筋肉量が増えないどころか、少しずつ減っており、その経験が、筋トレ前の血糖値と血中インスリン残量への関心へと繋がっています。
以上のようなことを踏まえ、現状では、筋トレ1時間ほど前に間食を採り、血糖値が(安静時の最高値が)180mg/dl 程度になるように計算して、インスリン注射(アピドラを4単位以上)を打っています。
筋トレは30~40分程度行い、筋トレ後にプロテインを摂取(糖質量は約6g)。
筋トレ1時間後に血糖値を測ると、大抵は100mg/dl 程度になっています。
これならまず、血糖を消費できずに筋肉が分解されていることはないでしょう(あくまで私個人の血糖値変動です)。まぁ、本当は筋トレの時間を夕食後とかにずらした方がいいんでしょうが…。
結果のほどは、まだ筋トレの頻度と強度を上げて3カ月程度しか経っていないので明らかではない(まだ筋肥大が十分に表れる時期ではない)のですが、1カ月に1度、診察の際に体組成計で測定した限りでは、筋肉量は微増しており、少なくとも減少はしていないようです。
——(追記:17/01/05)——
筋トレの強度と頻度を上げてから6か月ほどで、2kg程度の筋肉量の増加を確認できました。
ただ、体組成計(タニタ BC-108にて測定)の測定値は、続けて2回測定した場合でも結構変動するため、あまり参考にならない気もしています。
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しかし、まさか筋トレをするのにも準備が必要になるようになるとは。改めて1型糖尿病は酷い障害だと感じます。
いや、1型糖尿病になったことで、筋トレと血糖値の関係など(*5) について調べたり、考えたりする機会を得られたわけですから、ありがたいことなのかもしれませんね。
——–(追記:17/05/27)——–
4月にリブレプロ(常時血糖値を記録する装置)を装着し、その記録が出ました。
①~⑤までが、(この記事で書いたような)「補食+インスリン注射」の調整をした後に筋トレをした場合の記録。⑥は、調整をせずに筋トレをした場合の記録です。
(調整をせずに筋トレをした場合の記録をもっと取るべきでしたが、思い付いたのが測定が終わる前日だったので、1日分しか取れませんでした…)
この記録を見る限りでは、筋トレ前に調整をした場合には概ね、”筋トレによる”血糖値変動は小さくなっています。
また、筋トレ後の夕食の際に打ったインスリンの効きも概ね良くなっていると考えれます。
一方、筋トレ前に調整をしなかった場合(⑥)では、筋トレをしている最中には血糖値の変動はほぼないのですが、筋トレ後に急激に血糖値が上がっています。
また、夕食前に血糖値を測った際に高血糖を把握していたため、多めにインスリンを打ったのですが、それでも血糖値は下がりきらず、寝る前に追加でインスリンを打つ事態となりました。
参考データが少ない(特に「調整をしなかった場合」)ことは否めませんが、少なくとも現状では、筋トレの前に調整をした方が良いと考えていいでしょう。
ただ、以上の内容はあくまで私の場合のものであり、個人差が大きいかもしれないので、「1つのデータ」程度に参考にしてください。
*文量の関係から、おまけの項目を分離しました。
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→この本ほど筋トレへの意欲を刺激してくれる本はないでしょう。筋トレを始めようと考えている方は、ぜひ一読を。
*1. 筋肉量が増えると、基礎代謝の増加や、インスリン感受性の増加、筋肉での糖の取り込み(インスリンが不要)量の増加などによって、高血糖リスクの低下が期待できる。また、筋肉は低血糖(飢餓)時には糖原性アミノ酸を放出し、糖新生を通じ血糖値を上げるため、低血糖リスクの低下も(ある程度)期待できる。
なお、筋トレによる基礎代謝の増加は、筋肉の「量的な変化」だけでなく、筋肉自体の基礎代謝率の増加という「質的な変化」によっても起きるので、「筋トレで多少筋肉をつけても、基礎代謝は大して変わらない」というのは誤り。
また、多くの研究において、有酸素運動における基礎代謝の増加は認められていないので、基礎代謝を増加させたい場合には筋トレが必須。
・日本糖尿病学会『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013』(4. 運動療法) http://www.jds.or.jp/modules/publication/?content_id=4
・林達也「『運動不足病』健康作りの切り札、筋力トレーニング」『ストレングス&コンディショニングジャーナル』 https://www.nsca-japan.or.jp/journal/13(5)54-57.pdf
・「糖尿病患者さんに、なぜ運動が必要か」(糖尿病ネットワーク) http://www.dm-net.co.jp/fitness/staff/001/12.php
・「絶食時の代謝」(脂質と血栓の医学) http://hobab.fc2web.com/sub4-zesshoku.htm
・谷本道哉『筋トレ まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社 、2010)
*2. 私は主に、(所謂「若返りホルモン」としての役割を期待して、)「マイオカイン」の分泌を期待しています。
・船瀬俊介『3日食べなきゃ、7割治る!』(三五館、2013)
・左利き肝臓専門医ブログ http://www.hatchobori.jp/blog/2016/03/post-304-197409.html
もちろん、成長ホルモンの分泌による代謝促進、免疫機能の改善、細胞・組織の修復などや、男性ホルモンの分泌による記憶力、集中力、モチベーションの向上なども期待できます。
また、男性ホルモンには、NO (一酸化窒素)を産出する働きもあるため、血管の修復なども期待できるようです。ただ、筋トレを”長年”行っている人は動脈硬化度が高い(コレステロール沈着性の病態とは異なると考えられる)という研究もあるので、有酸素運動を併せて行うことで筋トレによる動脈の硬化を抑えることが必要です。
・アウトバーン株式会社 http://www.autobahn-group.co.jp/hgh.html
・メンズヘルスメディカル http://menshealth-md.com/testosterone/kouka/
・谷本道哉『筋トレ まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社 、2010)
・池谷敏郎『「血管を鍛える」と超健康になる!』(知的生きかた文庫、2014)
*3. 筋肉を動かすと、体温が上がることにより、免疫力が向上する
・石原結實『「食べない」健康法』(PHP文庫、2012)
また、*2でも挙げたように、成長ホルモンの分泌などによっても、免疫力の向上が期待できる。
*4. 血管が拡張、収縮することが、循環器、高血圧、心臓系の疾病の予防に繋がる。また、脳の血流が活発になることで、海馬を刺激し、認知症の予防になる。
・石原結實『「食べない」健康法』(PHP文庫、2012)
*5. ・メディマグ. 糖尿病 https://dm.medimag.jp/column/166_2.html
・あなたの健康百科 http://kenko100.jp/articles/120418000538/#gsc.tab=0
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自分も1型糖尿病なのですが、これから筋トレしようと思ってるのですが、
インスリン注射してご飯食べてから筋トレするのがベストなのですか?
> 自分も1型糖尿病なのですが、これから筋トレしようと思ってるのですが、
> インスリン注射してご飯食べてから筋トレするのがベストなのですか?
ご閲覧、コメントありがとうございます。
ご質問の件についてですが、運動前に捕食とインスリン注射を行うべきか否かは、正直難しいところです。
ただ、間違いないことは、運動による血糖値の変動には、交感神経優位になり、ホルモン等が放出されることで血糖値が”上昇”する側面と、運動により血糖が消費されることで血糖値が”下降”する側面があるということです。
健常な方の場合には、インスリンの自己分泌によってこのバランスが保たれるわけですが、1型糖尿病の場合にはインスリンの自己分泌が(ほぼ)ないため、運動の強度や時間次第では血中のインスリン量が不足して、筋肉が血糖を十分に取り込めない状態になるとともに、各種ホルモンの影響によって、血糖値が(下がることなく)ひたすら上がっていくという状態になると考えられます。
そのため、「運動の強度や時間次第」では、運動中の「血液中のインスリン量」が不足しないように、調整する必要が出てくるのです。よって、「血液中のインスリン量」が十分(食後それほど時間が経っていない場合など)であれば、調整は必要ない場合もあります。
(短時間のウォーキングや軽めのジョギングなど、運動の強度が低かったり、時間が短かったりする場合にも、調整は不要(な場合が多い)です)
なお、本記事で書いた調整は、あくまで私が自分で考え、自己責任で行っているものです。もし実際にやってみて、血糖値の変動がコントロールできないようでしたら、医師等に相談することを勧めます。また、最初は調整なしで血糖値を測定してみて、調整が必要かどうか検討した方がいいかと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。