音痴を直す(比較的)簡単な方法

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 新年度が始まって約1カ月。
 「カラオケに誘われる機会が増えて困っている」という、いわゆる「音痴」の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 気心知れた仲の友人と行くのならともかく、学校や職場の新しいメンバーとカラオケに行くというのは、音痴の人にはなかなかストレスのかかることです。
 私も、かつては同様の思いをすることが度々ありました。

 別に音痴でも死ぬわけではないですが、やはり、直せるなら直したいものですよね。

 というわけで、本記事では、音痴を直す(比較的)簡単な方法を紹介したいと思います。

 これは私が自力で音痴を直した際に採った方法ですが、この方法で音痴を直した友人・知人も何人かいますし、方法論的に多くの方に有効な方法かと思います。
 ただ、「比較的」という言葉が入っているように、「物凄く簡単!」というわけではありません。いくつかステップを踏む必要があるので、方法自体は簡単でも、「一瞬で音痴が直る!」という性格のものではない。このことを頭に入れた上で、お読みください。


 
 まず押さえてほしいことは、「音痴」から「歌を上手く歌う」へと進むためには、少なくとも、その間に「音痴ではない状態」というステップを置く必要があるということです。

 私のこれまでの経験(交流)では、音痴の人には、「音痴が直れば、どんな歌でも上手く歌えるようになる」と考えている人が多いように思います。
 確かに、音痴が直れば、音痴が直った分”だけ”歌が上手くなりますが、それが「どんな歌でも上手く歌える」ことに即繋がるわけではありません
 そして、このことを理解していないと、「一旦音痴の状態を抜け出そう」という発想に至らないため、いつまでも音痴のままな可能性が高くなります

 「音痴」→「音痴ではない」→「歌がまあまあ上手い」→「歌が上手い」
 というように、「音痴」から「歌が上手い」状態になるには、段階を経る必要があるということを、まずは押さえてください。


 ここから具体的な方法についての話になりますが、私が紹介する方法は、その方法自体は非常に簡単です。

 全体をまず示しておくと、

①自分の声域を5つに分ける
②その声域を歌に割り振る
③割り振った通りに歌う
 ―ここまでが「音痴を直す」段階

④声域の幅を広げていく
⑤声域を分け直す
⑥その声域を歌に割り振る
⑦割り振った通りに歌う
 ―以下、④~⑦の繰り返し

 
 という感じです。

 あまり見かけない方法かも知れませんね。
 これは私が自分で試行錯誤していく中で考えた方法であり、誰かが紹介している方法を参考にしたというわけではないので、見たことがなくても不思議ではありません。

 しかし同時に、同じような方法論を同じように考えついた方がいても、不思議ではありません。
 というのも、以上の方法を簡単にまとめれば、「オク下で歌えるようにして、そこから声域を広げていく」ということになるからです。
 ただ、その「オク下で歌う」ということがいまいちよく分からない人(かつての自分を含む)が、スムーズにオク下で歌えるようになるための工夫があり、そして、そこから徐々に「歌が上手い」状態になっていくための工夫も組み込んであることによって、以上のような見慣れない方法になっているというわけです。


 では、各項目ごとに見ていきましょう。

 まずは、「①自分の声域を5つに分ける」

 この「5つ」とは、「最低音」「低音」「普通」「高音」「最高音」の5つです。

 最初は、「普通」の音を確認しましょう。
 これは、最も楽に声を出せる高さの音で、要は「地声中の地声」
 力を抜いて、自然に出してください。

 なお、どの声域でも同様ですが、具体的な音階を把握する必要はありません
 「大体これくらいの高さ」ということが分かれば、それでOKです。
 また、それぞれの声域の音は、1音ずつ確認するだけでいいです。楽に出せる高さの音を1つずつ確認してください

 「普通」の音を確認したら、次は「低音」を確認しましょう。
 「普通」よりは”一段階”低い程度の音です。
 これも力を抜いて、無理なく出せる高さで出してください。

 「低音」を確認したら、「最低音」の確認です。
 「低音」よりさらに”一段階”低い音になります。
 ざっくり”一段階下”でいいので、まだ余裕が残る程度の低さで出してください。

 「高音」「最高音」も同様です。
 力を抜いて、ざっくり”一段階上”の音を、まだ余裕の残る程度の高さで出して、確認しましょう。

 なお、「高音」も「最高音」も裏声は使わず、地声で出せる高さで把握してください。
 裏声やミックスボイスといったものは、「音痴ではない状態」になってから使いましょう。

 以上、かなり簡単な説明のように思えるかもしれませんが、実際、これくらい簡単に把握すればそれでOKです。

 ポイントは、力を抜いて、”無理なく出せる”高さの音を出すこと。
 私が紹介する方法では、各声域に”幅”を持たせることが必要なので、「最高音」や「最低音」を”無理をしないと出せない音”で把握してしまうと、ここから先のステップはうまくこなせなくなります。ご注意ください。


 次は、「②声域を歌に割り振る」。
 簡単に言えば、この段階は、「この高さで歌うぞ」と事前に決める段階ということです。

 さて、”音痴”の人にもいくつかパターンがあるでしょうが、基本的には以下の2パターンに当てはまると思われます。

・「自分の最高音域(最低音域)で、その曲歌いきろうと(無意識に)しているために、音程が取れていない」パターン
・「曲の音程がどれだけ変わっているか分からないため、音が取れていない」パターン

 私の個人的な経験(交流)では、前者の方が多く、後者は稀です。
 また、前者の要素が強く、後者の要素も少し備えている人もそれなりにいるでしょう。

 上記2パターンのどちらにせよ、これは、「”事前に”自分が出す音の高さを割り振っておく」ことが対処ができます。

 曲に”そのまま”自分の声を合わせるのではなく、曲に対し”自分が出せる音域”を合わせる。これが要は「オク下で歌う」ということなのですが、そもそも音痴の方はそれがよく分からないからこそ、”音痴”な状態が続いているはずです。
 そのため、私が紹介する方法では、“歌う前に”自分が出せる音域を割り振ることで、曲に過度に引っ張られることなく、スムーズにオク下で歌えるようにします

 具体的な方法は単純。

 まず、歌いたい曲を聞き、「その曲の最高音の箇所」を把握し、次に、「その曲の最高音の箇所よりは低いが高めの箇所」を把握します。

 そうしたら、「その曲の最高音の箇所」に、①で把握した自分の「最高音」を割り当て、同じように、「その曲の最高音の箇所よりは低いが高めの箇所」に、自分の「高音」を割り当てます。
 「その曲の高音」よりも低い箇所があるようでしたら、そこには自分の「普通」を割り当ててください。(さらに低い箇所があれば、自分の「低音」を割り当てます)

 あまり細かく把握する必要はなく、むしろざっくりと把握してください。
 「この辺りが、この曲の最高音」「そして、この辺りが、この曲の高音」というように、ざっくりと把握し、そのざっくりとした把握に対し、①でざっくりと分けた自分の声域を割り振るのです。
 そうすれば、自分の各声域に幅があるため、その幅の中で曲の音程の変化に合わせて音程が取れるようになります。
 逆に、この幅を残しておかないと、音程が取れません。それがまさに”音痴”ということなのです。

 なお、自分の声域が歌いたい曲よりも明らかに高い場合(女性が男性ボーカルの低めの曲を歌う場合など)や、歌いたい曲の音自体が低い場合には、「その曲の最高音」から把握して割り当てるのではなく、「その曲の最低音」から把握して、自分の「最低音」を割り当て、次に「低音」を割り当て…というように進めてください。


 次は、「③割り振った通りに歌う」。

 ②で割り振った通りの声域で歌う、ただそれだけですが、まず、出だしに注意してください
 ここで、②で割り振った通りの声域で歌に入れないと、その後は音が取れなくなってしまいます
 歌い出す直前まで、その曲の出だしに割り振った音を出しておいて、そのまま歌い始めるようにすると安全でしょう。

 そして、事前に割り振った声域内で、音程を取ります。
 特に、「高音」の箇所では、「最高音」にまで上がらないように注意してください。
 「高音」の箇所で「最高音」まで出してしまうと、当然、「最高音」を割り振った箇所では、声が出なくなります。①、②の過程が全く無意味になりますし、何より、それでは”音痴”は抜け出せません。


 以上の①~③が、”音痴”を脱する段階になります。
 文章だけだと分かりにくいかもしれませんが、実際にやってみれば、非常に単純なことだと分かるかと思いますし、何曲か歌ってみれば、「オク下で歌う」という感覚も分かってくるでしょう。

 そして、オク下で歌うことに慣れ、「音痴ではない」状態になったら、そこから”徐々に”「歌が上手い」状態になるように、声域を広げていきます
 それが、「④声域の幅を広げていく、⑤声域を分け直す、⑥その声域を歌に割り振る、⑦割り振った通りに歌う、―以下、④~⑦の繰り返し」の段階です。

 声域の幅の広がりに合わせ、声域を分け直し、曲への割り振りも見直していく。そのように”段階を経る”ことで、確実に歌は上手くなっていきます。

 しかも、”段階を経る”方法を採ると、「明らかに音痴」といった状態や、「明らかに下手」といった状態を早く、確実に抜け出せるので、音痴であるが故にストレスを感じる機会を早いうちになくせます。

 確実性と、「音痴ではない」状態に至るまでの即効性。これが、私が提案する方法の強みです。
 音痴の方は、ぜひ1度試してみてください。単純なメソッドなので、「失敗する」ということはほぼないはずです。


 以下は補足として、上記方法を採る際のコツなどを紹介します。

 まず、①自分の声域を5つに分ける~③割り振った通りに歌う、の「音痴を直す」段階では、まだ声域の幅が小さく、各声域の差も小さい場合があるかと思います。
 その場合、割り振った通りの声域で歌うのは、なかなか難しいこともあるでしょう。

 そういった場合には、喉などで音の高さを調整するのではなく、”口で”音の高さを調整することをお薦めします
 これは文字では説明し辛いのですが、口の開け方(閉じ方)、息の抜き方などで、音の高さを調整するということです。

 比較的分かりやすい例としては、口を開けて(普通に)歌う場合と、口を閉じ気味にして口の横から息を出して歌う場合では、実際に聞こえる音の高さに違いがあるはずです。(基本的には後者の方が低くなるでしょう)

 また、このような方法で声の高さを(若干)調整できるようになると、声を溜めるような感覚が分かり、歌に抑揚などもつけやすくなります

 単純に、高い音や低い音が出るだけでは、歌は上手く聞こえません。
 あなたの周りにも、歌声が高く(低く)なりっぱなしで抑揚がないタイプの人がいませんか? いくら高音(や低音)が出ていても、音の高低を取れていないという点では、私はこのタイプの人も”音痴”なのだと思います。

 いわゆる”プロの歌手”の歌をよく聞いてみてもらえば分かるかと思いますが、高音域や低音域がそれほど広くなくても(と言っても、素人よりは広いのですが)、歌が上手いタイプの歌手は多くいるはずです。
 分かりやすい例では、郷ひろみさんや、サザンの桑田佳祐さん。彼らは、高音域をいわば”売り”にしているような歌手と比べれば、高音域は広くないでしょうが、当然、歌は上手いですよね?
 音痴の方がまず目指すべきなのは、彼らのような歌い方なのです。

 例え平坦な歌であっても、人に聞かせられるような歌い方。それが出来る人が、私は”本当に”歌が上手い人なのだと思います。
 そのような歌い方を目指しながら”音痴”を克服し、そして、徐々に声域の幅を広げていけば、歌声が高く(低く)なりっぱなしで抑揚がないタイプの”音痴”になることも避けられます。

 

 次に、オク下で歌うことに慣れ、”音痴”の状態を直した後の声域の広げ方について。

 …ですが、この点については、私が力になれることはあまりないでしょう。
 というのも、私は「少なくとも音痴ではない」状態にあるとは思いますが、「誰が聞いても歌が上手いと思う」状態にはないからです。

 言えることがあるとすれば、「喉などを鍛えて声域を広げる」ようなトレーニングよりも先に、「声の出し方」を変えることが重要ということでしょうか。
 声の出し方に改善の余地がある状態で、声域を広げるようなトレーニングをしても効果は薄いでしょうし、逆に、喉などを傷める可能性さえあります。
 そして、声の出し方を改善する方向であれば、比較的結果が出やすいので、自身の成長も感じやすいでしょう。

 具体的な方法については、各種書籍や、他の「歌が上手い」方のサイトなどを確認していただければと思いますが、私のお薦めは、『1週間で3オクターブの声が出せるようになる本』。

 この本のメソッドで本当に1週間で3オクターブの声が出せるようになるかは、私からは何とも言えませんが、少なくとも、“音痴”の状態から「歌が上手い」状態になるために必要であろう「声の出し方」という点では、大いに参考になります
 特に、歌う際の「息の吸い方・吐き方」と「力の抜き方」については、この本以上に参考になるものは、多くはないでしょう。
 私はトレーニングのようなことは普段していませんが、カラオケに行った際などには今でも、この本で書かれている力の抜き方のメソッドなどを(簡略化して)使っています。それだけでも、声の出しやすさが大分変わるので、「声の出し方」について知識がない方は、一読することをお薦めします。



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